龍・竜・辰
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前回のメルマガで、司馬遼太郎が「秀吉は人たらし」と表現したことで豊臣秀吉にそのようなイメージが定着し、また、「人たらし」について、本来とまったく反対の意味を定着させたとお伝えしました。
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〇たらし
その司馬遼太郎の代表作を改めて眺めながら、ふと思い出したことがあります。
「坂本龍馬」を題材にした有名な時代小説「竜馬がゆく」で、「りょう」を「竜」の字で表現しているのは、司馬遼太郎氏曰く「自分が描く坂本竜馬と実在の坂本龍馬を区別するため」とのことでした。
不思議に思った当時は、その理由にすんなりと納得しましたが、この漢字の使い分けについて、改めて確認したくなりました。
「龍」と「竜」、どちらも神話や伝説などに出てくる空想上の生き物、ドラゴンを意味しますが、この使い分けに決まりはあるのでしょうか。さらに、来年は辰年です。「辰」も同じくドラゴンを象徴していますが、その違いは何でしょう。
「竜」「龍」「辰」の漢字について辞典によって解説が異なっているのですが、「竜は龍の省略体」と書かれているものもあれば,「竜は龍の古字」とも書かれています。
「龍」という漢字を簡略化したものが「竜」だとすると、「龍」のほうが先にできたように思いますが、「竜」は古字であり、使用された歴史は「竜」のほうが古いとされています。
「竜」という字の成り立ちは「頭に冠をかぶる大蛇をかたどった象形文字」と言われ、紀元前に存在した古代中国の王朝「殷(いん)」の時代には既に使用されていたようです。
その後、「竜」という字に色々な装飾や模様が加えられて「龍」という字になったようです。つまり、「竜」が先に生まれ、「竜」という字をベースに「龍」という字が生まれたということです。
日本では戦後、国語改革が行われ、難しい漢字や画数が多い漢字を簡略化しましたが、その一環で「龍」という字も簡略化した「竜」が使われ、同時に「竜」が常用漢字として登録されました。
「恐竜」や「竜巻」、「竜頭蛇尾」や「画竜点睛」など「龍」より「竜」の表記が多いのもこのためです。一方、「龍」という字は常用外漢字ですが、人名用漢字として登録されているので、名前に用いることは認められています。
一方、「辰」は「十二支」のひとつであり、シンボルとして「竜/龍」があてられています。「十二支」とはもともと、年月や時刻、方位を計るために用いられたもので、「辰」という字も「草木の形が整った状態」を表しているとされています。
その後、「子」=「鼠」、「丑」=「牛」・・「辰」=「竜/龍」のように12種類の動物がそれぞれ割り当てられました。
ということは・・・本来は「辰」という字には「竜/龍」のような「ドラゴン」という意味は含まれていないのです。あくまで「十二支」におけるシンボルとして「竜/龍」が割り当てられているのですね。
辰年は陽の気が動いて万物が振動するので、活力旺盛になって大きく成長し、形がととのう年だといわれています。また、たつ(竜、龍)は十二支の中で唯一空想上の生き物で、権力や隆盛の象徴であることから、出世や権力に大きく関わる年といわれています。
うまく割り当てた感じがします。
ちなみに竜の姿は「竜に九似あり」といわれ、角は鹿、頭は駱駝、目は鬼、身体は蛇、腹は蜃(想像上の動物)、鱗は鯉、爪は鷹、掌は虎、耳は牛に似ており、長い髭をたくわえ、あごの下に1枚だけ逆さに生えた逆鱗(げきりん)があります。
竜はこの逆鱗に触れられるのが大嫌いで、触れられると激高し、触れたものを即座に殺すとされています。
これが、「逆鱗に触れる」ということわざの語源にもなっています。
さて、2024年の干支は「甲辰」(きのえたつ)。大きく飛躍の年であることを願います。
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