初心ってどんな心？

田巻華月メルマガ「『人間力』に磨きをかける！」メールセミナーの内容をブログでは1週間遅れで簡潔にお伝えしています。2018年10月19日配信分のメルマガの内容です。

「初心忘るべからず」誰もが聞いたことがある言葉でしょう。「物事を始めた頃の気持ち、初めの志や純粋な気持ちを忘れずに取り組め」のような意味で使うことが多いのではないでしょうか。

「初心」という言葉を辞書でひいてみると、

1．最初に思い立ったときの純真な気持ち。初志。

2．物事の習い始めであること。また、そのさま。初学。

3．物事に慣れていないこと。世慣れていないこと。また、そのさま。うぶ。

4．仏教で、初めて悟りを求める心を発すること。また、その人。

出ました。また、仏教です。かのスティーブ・ジョブズ氏も「仏教には初心という言葉があり、初心を持つことは素晴らしいことだ」という言葉を残しています。

さらに紐解いてみると、「初心忘るべからず」は、室町時代に能を大成させた世阿弥が、能役者が芸を極めるために必要なことを書いた『花鏡（かきょう）』という伝書に残した言葉でした。

「しかれば、当流に、万能一徳の一句あり。初心忘るべからず。この句、三箇条の口伝あり。是非の初心忘るべからず。時々の初心忘るべからず。老後の初心忘るべからず。」

なんと、「初心」は３つあったのです。若い時の初心、人生のその時々の初心、そして老後の初心。世阿弥は、人生にはいくつもの初心があり、それらを忘れてはならないと言っています。

「初心」とは、芸における「未熟さ」未熟だったことを忘れてはいけないということなのですね。「初心者の頃のみっともなさ」を折に触れて思い出すことで、あの頃には戻りたくないと思い、さらに精進できると説いています。

何事も始めた頃は未熟で出来ないことばかりですが、だからこそ一生懸命上達しようと努力するでしょう。しかし、少し出来るようになると、未熟だった頃を忘れて、あたかも最初から出来たかのように振る舞いがちです。

その気の緩みこそ、初心　＝「未熟な心」ではないかと思います。

その気の緩みから失敗した経験をお持ちの方もいらっしゃるでしょう。新入社員よりも、入社2，3年と少し慣れてきた頃に初歩的ミスをしてしまう社員も多いものです。皆さんの周りではいかがでしょうか。

上達して気が緩むときこそ思い出さなければならないことで、さらには、若い頃の未熟さだけではなく、人生のどの段階においても人は未熟で、それは老後になっても変わらないと言っています。ちなみに、世阿弥がこう記したのは50歳半ばのようです。

大人になったからこそ、また老後になったからこそ直面する壁や試練があり、その壁を乗り越えた経験が、その後の芸の向上に役立つというのです。誰でも常に未熟なところがあるので、いつでも気を緩めずに精進せよということですね。

世阿弥は芸について説きましたが、「初心忘るべからず」は、仕事や人生そのものに当てはまります。田巻も、新人アナウンサー時代や落ちこぼれ秘書時代を思い出すと、恥ずかしい思いでいっぱいです。しかし、未熟なりに努力して得たものが今に繋がっています。そして今も新たな壁に直面するたびに、もがき苦しむ未熟者に過ぎません。

「初心忘るべからず」

芸事はもちろん、趣味、仕事、勉強、経営などなど、何をするにもあてはまる良い言葉ですね。