「竜田揚げ」と「秋」の関係
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パン屋さんに併設するカフェでランチしました。いろいろな種類のパンに具材を挟むスタイルです。
ワンプレートに、具材が色鮮やかに盛り付けてありました。レタスなどの葉物野菜に、たまごサラダ、キャロット・ラぺに、ミートローフ、キッシュ。そこに、竜田揚げのサバもありました。
新潟県の柏崎のご当地グルメに鯖サンドがあります。1度食べたことがあったので、味は想像できましたが、ふわふわの焼きたてパンに自分好みの野菜と一緒にサンドすると格別でした。
影響を受けて、うちでも、いろいろなパンにお惣菜やおかずを挟んでみました。サバもばっちり準備。サバの竜田揚げを眺めながら・・・思い出しました。料理番組を担当していた頃に先生に質問したことを。
そもそも、「竜田って何よ・・・」と思ったことはないでしょうか。
きょうから11月。ようやく秋を感じられる気候となりましたが、秋と言えば・・・「紅葉」です。竜田揚げの名前の由来は、紅葉が関係していました。
奈良県北西部を流れる紅葉の名所、竜田川。川面に浮かぶ紅葉からその名が付いたのが「竜田揚げ」なんだそうです。
竜田川が流れる奈良県生駒郡斑鳩町の斑鳩町役場のホームページをのぞいてみると、「『竜田揚げ』の『竜田』は、斑鳩町を流れる『竜田川』のことってご存じでしたか?」と説明がありました。
それによると、揚げた時に醤油の色が赤くなり、ところどころに片栗粉が白く浮かぶようすが、紅葉が流れる竜田川に見立てられたことから、その名がついたと書かれていました。
竜田川の紅葉と光る水面に似ているところからきたということです。
いつ頃から名称が使われ始めたのかは不明のようですが、百人一首にも選ばれている在原業平の有名な和歌「ちはやぶる 神代も聞かず竜田川 から紅に水くくるとは」が平安時代に詠まれています。
竜田川の水面を真っ赤な紅葉が染め尽くし、美しい錦のくくり染め(しぼり染めのこと)の布のように見える風景を詠んだ歌です。
食文化研究所の北野智子さんによると、カラりと揚がった衣に透けて見える醤油色(=紅い色)とその上に浮かぶ白い点模様を「竜田の錦」=「紅葉」に見立てて命名された風情ある日本料理の名前で、
竜田山は秋の女神「竜田姫」が司り、その袖を振って山々を染めていくことから、竜田揚げは秋にふさわしい料理だということです。
ところで、実はもう一つ、「竜田」と呼ばれるようになった説があります。第一次世界大戦後の1920年頃に日本軍の軍艦 龍田で誕生したからというものですが、航海や訓練中に激しく揺れる船で高温の油を使うのは危険で、海軍料理研究家は、この説を否定しているようです。
さて、現在では唐揚げを作るときに下味をつけたり、衣に片栗粉が使われたりすることもあります。そのため、唐揚げと竜田揚げの明確な違いはなくなってきたように思います。基本的には、唐揚げの衣に小麦粉が使われることが多いのに対して、竜田揚げの衣は片栗粉の場合が多くなっています。「唐揚げ」は、「空揚げ」とも書くことからも、もともとは食材に何もつけずに素揚げすることを言いました。
このため、下味に関しては本来の唐揚げにはつけずに、竜田揚げは必ず下味をつけるのが特徴です。
川面に映る紅葉が由来の竜田揚げ。この時期は、下味に醤油を使って竜田揚げをつくってみてはいかがでしょうか。
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