タソガレタりんご?
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先日、テレビから聞こえた言葉に、料理をしていた手が止まりました。りんごを使った料理の紹介で、地元の主婦が芸能人にスイーツの作り方を紹介する内容でした。
りんごを薄くスライスして、ジャムを作る要領で煮ているようでしたが、その際、その女性が言った言葉です。
「もうすこし、『タソガレタりんご』でもいいんですけどね」
ん?今、何と?思わず、テレビの前に移動しました。
タソガレタ?たそがれた?あっ、黄昏れた?黄昏れたりんご?ほ~。
「黄昏れたりんご」という表現を、聞いたこと、または使ったことがありますか?
田巻は初めて聞きました。そしてすぐに辞典とネットで調べたのですが・・・そのような表現は見当たりません。たそがれ、漢字で書くと「黄昏」について、学び直してみましょう。
辞典を引くと、「黄昏」は、
1「たそがれどき」の略。
黄昏時とは、夕方うす暗くなり、「誰(た)そ、彼」(たそかれ)と人の顔の見分けが難しくなった時分。夕方。夕暮。
昔の夕暮れ時は、遠くにいる人の顔が判別しにくかったため、「あの人は誰ですか?」ということですね。
さらに、比喩的に、
2 物事が終りに近づき、衰えの見える頃。人生の黄昏時などと使います。
「黄昏れる」は、動詞化した表現です。夕方になる、比喩的に全盛期を過ぎて衰える、ということになります。
話を元に戻しまして、「黄昏れたりんご」と聞いたとき、田巻は、なかなかうまい表現をする人だなと思いました。夕方という意味以外に、「全盛期を過ぎて衰える」という意味も知っている人には、比喩の比喩の表現として、なかなかの詩人と思った方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ジャム状にするので、「古くなった」「傷んだ」りんごでもいい、というところを、「黄昏れた」と表現したわけです。
ニュース勤務の際、60代のデスクにその話をしたところ、「いや、今まで聞いたことないな。でも、なかなかの詩人でいいね」という感想が返ってきました。田巻と同じ感覚です。
ちなみに、「なに、黄昏れてるの?」など、「物思いにふける」という意味で使う人もいますが、これは誤用です。
一部の辞典に、「俗にこのような使い方をする」など紹介されているようですが、正しい言葉遣いを身につけておきたいものです。
いつか、傷みかけた、腐りかけた食べ物に「黄昏れた」と使ってみようと思いますが・・・記憶力低下を実感している今日この頃。人生の黄昏時はまだ来てほしくないと願うばかりです。
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