胸と眉

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「毎年、検診を受けていましたか？」

医師から発せられた言葉に、「はい」と即答し、その後、それはどういう意味なのかを想像しました。

 

 

マンモグラフィの映像を“ 眉をひそめて ”穴が開くほど至近距離で見つめていた医師は、その後のエコー検査でも、何度も何度も胸の映像を確かめていました。無言で。その間、私はずっと“ 胸がつかえて”“ 眉を曇らせ”ていました。

 

 

田巻の心の声です。

「長い。長すぎる。『検診を受けていたか』と聞かれるということは、『受けていたらこんなことにならなかったのに』または、『受けていても、見つけることができなかった』さらには、『昨年の検診後に発症した可能性がある』ということか？」

 

 

怖くて表情を見ることができず、医師の眉間のシワだけが目に入ります。医師が何を言わんとしているのか、“ 眉を読んで”いました。

 

 

長い沈黙に、“ 胸が潰れるような ”思いがし、今回だけは、田巻も覚悟を決めました。

 

 

 

1か月前の人間ドックの結果には、乳がん検診の精密検査が必要と書かれていました。乳がん検診でひっかかったのは2度目。数年前の1度目では異常なしだったため、どこかで「またか。まあ、大丈夫だろう」という思いはありながら、以前とは違う症状の文言に焦り、妙に“ 胸が騒いで ”すぐに検査を予約したのです。

 

つい最近、毎年人間ドックを受けていた知人に癌が見つかり、転移までしていたことがわかりました。気持ちを察すると“ 胸が塞がり ”ます。それも、すぐに白黒つけたかった理由です。

 

 

長く沈黙していた医師が、エコー検査の手を止めてようやく口を開きました。

 

「うん。特に異常ないね」。

 

 

私は一度吸った息を止めて、大きく吐き出し、安堵で“ 胸をなでおろし”ました。ため息に交じった「よかった～」という一言が診察室に響きました。

 

 

と同時に、男性医師の眉間のシワが薄くなり“ 眉を開いた”ように見えました。私も“ 愁眉を開く”という表現を自分自身に使いたくなりました。

 

 

 

「愁眉（しゅうび）を開く」は、今までの心配事がなくなって、安心するということです。「胸をなでおろす」と似た意味の言葉ですが、「愁眉」とは、心配のために眉を寄せる行為のことで、「愁い」をおびた「眉」は、心配事がある表情にぴったりです。

 

 

「眉」には、感情が現れます。また、「胸」は心情や態度の意味があり、さまざまな言葉遣いが生まれています。ここまで、「胸」と「眉」が入った言葉をいくつか使って表現しました。他にも多くの表現が存在します。

 

 

同じ感情を英単語で表せばいくつかに絞られても、その時々の感情に合う言葉を日本人はいくつも生み出してきたのでしょう。

 

 

「毎年、検診を受けていましたか？」の質問は、過去のデータと比べるために聞いたようで、その後に言葉が続かないと、聞き方次第、受け取り方次第でいかようにとれる質問だと改めて思いました。

 

 

ということで、お騒がせしましたが、精密検査は異常なしで、“胸がすく”思いがしました。

 

 

自他ともに「体力がある」ことだけは認めますが、数年に一度、胃、大腸、子宮、乳がん検診で再検査をすすめられます。

 

 

そのたびに、その場でポリープ除去や異常なしで、事なきを得るわけですが、「少しゆっくりして」「いたわって」と体からのサインなのでしょう。

 

 

診察室から出て、窓の外を眺めたとき、世界が明るく見えました。「あ～。命、もうけた」とつぶやき、健康のありがたさを“胸に刻み”ました。

 

 

“胸がときめき”“胸がふくらむ”ような“胸を躍らせる”新年度のスタートにしたいと誓い、“胸を張って”取り組んでまいります。ほどほどに。

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●○●　編集後記　●○●

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まだ20代のうら若き乙女の頃、乳がんのセルフチェックでしこりがあることに気がつき、病院にかけこみました。

 

ゴリゴリしたものを押えたら痛いのです。

医師は触診して言いました。

 

「うん。これね。肋骨だよ。誰でも強く押すと痛いよ」。

 

今思い出しても、穴があったら入りたい・・・でも、ネタになっているので、よしとします。

 

 

田巻　華月メルマガ「『人間力』に磨きをかける！」メールセミナー　「1ミリでも前へ！一歩踏み出す勇気とやる気をプレゼント！」をコンセプトに、生涯アナウンサー＆元秘書　田巻華月がおおくりしています。