新潟に居を移して早１５年。１戸建ての賃貸での生活です。大家さんのご配慮のお陰で、まるで自分の家のように時を重ねてきました。

最初は何もなかった玄関アプローチに、寄せ植えの鉢やプランターを置いて、少しずつ緑も増えていきました。

どこから種が飛んできたのかわかりませんが、植えたつもりはない植物も育っています。１０年以上の年月をかけて、コンクリートの門柱につる性の植物が生い茂るのです。冬になるとすべての葉を落とし、雪の時期も耐えて冬を越します。最初の頃は、とうとう冬枯れしたと思っていました。しかし４月になると、みずみずしい緑色の新芽が顔をのぞかせます。そして、日に日に勢いを増し、背伸びをするように一斉に生い茂るのです。

今年も枝いっぱいに、新緑が芽吹きはじめました。「そろそろかな」と声が聞こえてきそうです。その芽吹く様子を見ながら、田巻はいつも思い出す言葉があります。

鹿児島放送時代の元上司から言われた言葉です。何気ない会話でしたが、心に響いた言葉は今でも忘れることはありません。

4月の部署異動について話していたときのことです。

「草木が芽吹く時のエネルギーのように、新しい部署で新しい仕事に対して向き合う時の力が大事。慣れた仕事をし続けることは簡単だが、考えなくなる。やったことがない仕事や新しい仕事は、どう工夫すればいいのか、常に考える。日々考える力がまたお互いの刺激になる」

この時期は、そんな芽吹くエネルギーが溢れています。

異動時期は、「この人がいなくなったら、まわらない」なんて言葉をよく聞いたものです。しかし、その部署でリーダー的存在がいなくなると、また新たにリーダーが生まれるのです。見えない土のなかで、今か今かと芽吹く力を蓄えている社員がいるかもしれません。

さて、新年度がスタートして早1か月が経とうとしています。環境は変わりましたか。会社員の方は４月１日付で異動した方もいらっしゃるかもしれません。自分は異動しなくても、目の前の席の人が変わって、まだ慣れない、なんてこともあるかもしれません。

仕事、プライベート、全く変わらないという方も、真新しいスーツに身を包んだ新入社員にかつての自分を重ねたり・・・進入学シーズンで、子供たちが新しい環境に飛び込む姿を見るのは、ワクワクするものではないでしょうか。

芽吹く力を見て、それをまた自分の力に変えることができるかもしれません。

１５年前、当時は会社を辞める日がくるとは思ってもみませんでしたが、取得した資格が肥しとなり、今の講師業に活かされています。

鹿児島から遠い新潟の地に飛んで自ら種をまき、芽吹き、今後も花を咲かせるために、自ら、大地に水と栄養を与えている田巻です。

さて、田巻家の、植えた覚えのないつる性植物。夏には小さな白い花を咲かせますが、何という植物か、名前もわからず眺めてきました。

しかし、そうだ！花が咲いたらグーグルカメラで写真を撮って検索してみよう！

なぜ今まで気がつかなかったのでしょう・・・

小さな芽吹く力が生まれました。