まずは、ご報告と御礼です。このメルマガは2017年の10月20日に配信をスタートし、今回の№418でちょうど8周年を迎えました。

感想を返信してくだる方、お会いしたときに話題に取り上げてくださる方、ネットで記事をご覧になって登録してくださる方もいらっしゃいます。全国の存じ上げない方とも、このメルマガを通してご縁をいただくことは本当にありがたいことです。

先日も熱心な読者の方からご連絡をいただきました。親族に読んでもらうために415回までを印刷したころ、なんと、A4サイズ600枚になったとのこと。田巻は印刷をしようと思ったこともないので、そんな枚数になることに驚きました。読者の皆様に印刷を強いるのも恐縮ですので、いつの日かテーマを厳選し、本になる日をお待ちいただければ嬉しいです。

田巻の修業にお付き合いくださいまして、読者の皆様に心から感謝いたします。今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。

さて、今週のテーマは・・・「クマ」です。

先日、読者の方にお会いした際、こんな質問をいただきました。「『クマ』のアクセントで、「マ」を高く言う言い方と「ク」を高く言う言い方を聞くが、どちらが正しいのか」

その際、田巻は「『マ』を高く言う言い方が正しいですね」と答えました。

この話には補足が必要なのですが、その会話の途中で他の話になったため、改めてメルマガを通して回答いたします。

実は正確に言うと、どちらも正しいのですが、アナウンサーとしては説明したい言葉なのです。細かい点をいうと難しいので、わかりやすくしますが、私たちアナウンサーがニュースを読むときは、基本的に「クマ＼」と後ろの「マ」を高くする尾高（おだか）型のアクセントで発音しています。「クマ＼」の表記は、「＼」のあとが下がることを意味します。

しかし、ニュース以外の番組や日常生活にまで広げてみると、「ク＼マ」と最初の「ク」を高くとる頭高（あたまだか）型のアクセントで発音する人も多くいます。

皆さんはいかがでしょうか。

一般の方のなかには、ニュースで聞く「クマ＼」という2拍目を高くとる発音に「違和感がある」「目の下の隈（クマ）と区別がつかない」という意見もあるようです。

といっても、日本語には標準アクセントというものがあり、ニュースを読むアナウンサーの発音は、その標準アクセントに基づいています。では、やはり後ろが高い「クマ＼」が正しいのね・・・と思われるかもしれませんが、2016年まではそれが完全に正しいかったと言えます。しかし、実は「クマ」のアクセントは2016年に変わったのです。

アナウンサーをはじめ日本語を伝える仕事の人や、日本語教育に携わる人などが、標準アクセントの確認のために使うのがアクセント辞典です。有名なのはNHKのアクセント辞典で、田巻も愛読しています。実はこのNHKのアクセント辞典は2016年に『NHK日本語発音アクセント新辞典』に改訂され、それと同時に3300の語についてアクセントの見直しが行われました。

「クマ」はその中の一つで、従来は「クマ＼」というアクセントを標準としていたのが、改訂によって「ク＼マ」というアクセントも第２アクセントして認められたのです。

変更があったということは、世間一般で「ク＼マ」の発音が定着しているということ。そのうえで、アナウンサーが「クマ＼」のアクセントを貫くのは、以前からの標準アクセントで、第１アクセントだからです。

ニュースで扱う場合、クマの目撃情報や被害など、いわゆる生きた動物としての怖い「クマ」には「クマ＼」のアクセント。しかし、世間でぬいぐるみやキャラクターとしての「くま」には「ク」を高く言う発音がかわいいイメージを受けます。

このため、一般的に「ク」を高く言うアクセントが広まったのではないか・・・と個人的には考えています。

「森のくまさん」という童謡がありましたが、言葉の森に棲んでいる熊は、「クマ」「くま」と2種類いるようです。

拙著『改訂版　安心と自信を手に入れる！ビジネスマナー講座』が発売されて4か月で重版が決定ました。