言葉から始まる

田巻華月メルマガ「『人間力』に磨きをかける！」メールセミナーの内容をブログでは1週間遅れで簡潔にお伝えしています。2019年６月28日配信分のメルマガの内容です。編集後記やセミナー情報などをタイムリーにご覧いただくには、メルマガにご登録ください。メルマガは毎週金曜日の午後に配信しています。

6月も残すところわずかとなりました。鹿児島放送退職後から3年前まで、その方の6月の誕生日には、必ず電話をかけていました。

秘書として一緒に仕事をさせていただいた鹿児島放送の元社長、坂口和之氏です。残念ながら2年半程前に旅立たれましたが、今でも田巻の手帳の6月の日付には印がついています。

2人の社長のもとで秘書として仕事をしながら、多くのトップや管理職の裏側を見てきた立場で思うことがありました。

経営者はじめ、上に立つ立場になればなるほど、ときに「孤独」であるということです。

決して寂しいというわけではなく、１人で判断をしなければならない、また考える時間を要することが多く、特に社長という立場を保つためにもそうならざるを得ないというのでしょうか。

坂口氏が専務時代から傍にいた私は、社長就任までの複雑な胸の内を見ていました。前社長も坂口氏も、もともと新聞記者で全国を飛び回っていた方でしたが、マスコミとはいえ新聞とは勝手が違う放送局。推し量れるものではありませんが、様々なプレッシャーを抱えているのは感じるところでした。

株主総会、取締役会を控え、社長就任挨拶の練習をされているのを知っていました。その本番を「その調子、その調子、うまく言えている！」と母のような気持ちでドア越しに聴いていた田巻です。

少しでもホッとしてほしい、そしてよろしくお願いしますという思いで、社長室に戻ったらすぐにわかるよう、机に1枚のハンカチを。私の思いを綴った短い手紙を添えました。

これから一緒に、ハンカチで汗を拭き、嬉しい涙を流しましょうという決意を込めていました。私の前では気を使わず、言いたいことを言ってほしい旨を書いたと記憶しています。照れ屋の性格ゆえ、恥ずかしそうに合図されたあとは、私が退職するまで手紙について触れたことはありませんでした。

改めて御礼を言われたのは、それから4年半後のことです。会社を後にする最後の日に、あの時のハンカチと手紙が嬉しかったと話してくださいました。

さらに、それから7年後に出版した拙著『「秘書力」で人生を変える!』に寄稿をお願いした際、その時のエピソードが綴られていました。

タイトルは、「人と人の関係は言葉から始まる」。

『短い手紙には、秘書としての形式的な挨拶はなく、上司への定型文もなく、人には見せなかったつもりの「しんどさ」への気遣い、「やる気」への励ましが伝わってきた』と書かれていました。

坂口氏が大病を患い入院生活を送ることになった際、業務連絡がない日も、会社での出来事を綴った短いメールを送りつ・け・ていましたが、そのことも含め、このような素敵な文章で締めくくっています。

『スタートの手紙と病床でのメール。社長在任中の仕事を通した彼女との付き合いを全体から見れば、取るに足らないことともいえます。しかし、人と人の関係は言葉から始まります。日常の言葉が肩書や自分の立場だけを考えた身勝手なものになっていないか、改めて自身を振り返させる、大きな出来事でした』。

依頼した文字数は1200文字程度でしたが、送られてきたワードの文字数がぴったり1200であることを発見し、新聞記者魂をみせられました。残念ながらこの寄稿文が坂口氏、人生最後の原稿です。

書店に並ぶ前に送った拙著を、病院で嬉しそうに読んでいたと奥様から聞かされました。訃報を聞いたのはそれからすぐのことです。

さて、ちょうど一週間前、沖縄での2つの講演で温かい皆様に出会い、たくさんのご縁をいただきました。（詳細は編集後記のブログからどうぞ）

損保ジャパン日本興亜株式会社の女性社員の皆様へ「転機をチャンスに！～志は一筋、道は幾筋～」と題して。さらに、AIRオートクラブ・損保ジャパン日本興亜主催年間表彰制度最優秀支部賞4年連続受賞の祝勝会に伴う記念講演で、経営者の皆様へ「会社は掛け算！～チーム力で幸せの連鎖を生み出す秘訣～」と題しておおくりしました。

タイトルにしている「転機をチャンスに！」「幸せの連鎖」という言葉は、どちらも、拙著に同じく寄稿していただいた2人の元上司の文章からいただいた言葉です。

言葉はコミュニケーションをとるための道具。人と人の関係は言葉から始まります。さらに、言葉には未来を引き寄せる力があります。

講演では言葉の力についてお話しましたが、祝勝会では、沖縄支部奇跡の4連覇に続き、「奇跡を超える5連覇達成します！」とチーム力で達成することを断言されました。