「こだわる」に、こだわる
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ある男性タレントが、「昔ガソリンスタンドで働いていたので、洗車にはこだわりがあります」と話していました。
グルメ番組などを見ていても、店主へのインタビューには必ず「こだわり」が出てきます。「地元の食材にこだわった料理」などよく聞きます。
皆さんは、この「こだわり」という言葉をどのような意味で使っているでしょうか。
「物事に妥協せずそのことだけは譲れない」という意味で使っている人が多いようですが、これは従来なかった新しい使い方です。
しかし、「こだわる」のもともとの意味は、「すらすらといかず、ひっかかったりつかえたりする」ことです。
そこから、「気にしなくてもいいようなことが心にかかる。気持ちがとらわれる」という意味となり、たとえば「ささいな失敗にこだわる」などのようにどちらかと言えば否定的な意味合いで使われることが多い言葉でした。
これが、気持ちがとらわれるという意味から、妥協しないという肯定的な意味に転じたものが新しい言い方だと思われます。
漢字にすると、「拘る」で、同様の意味に「拘泥(こうでい)」がありますが、あくまでも否定的な意味で使われます。
2014年のNHKの記事に、『最近の国語辞典は、この「こだわる」の肯定的な意味を、新しい言い方だと注記するかどうかの違いこそあるが、ほとんどが載せ始めている』と記されています。
その頃すでに、「完全に市民権を得たと考えて良さそうである」と書かれていましたが、今では、もともとの意味を知らない世代もいるかもしれません。
特に若い世代は新しい意味ばかりを使う人も多いようですが、もともとの意味を知っている年代には、少なからず違和感を与えてしまいそうです。
言葉の歴史を知っておくことが大切で、その知識があれば、「こだわり」を「特別な思い入れ」など他の表現に変えることもできます。便利な言葉ですし、そう言ったほうが伝わるので、私もよく使いたくなるのですが、なんだかモヤモヤして、他の表現を探したりします。
「こだわる」に、こだわっています。
6月下旬に刊行が迫った新刊の「こだわり」は・・・編集後記でどうぞ。
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●○● 編集後記 ●○●
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新刊のビジネスマナー本は、ゲラ(本になる前の試し刷り)やイラストチェックの追い込みが続いています。
今回の本は、一般的なビジネスマナーの本でありながら、随所に、すぐに使える「言葉遣い」を載せています。
さらに、挿絵のイラストをどのイラストレーターさんにお願いするか、この点も「こだわり」ました。
「言葉」と「イラスト」が「こだわり」です。
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