カ取り敬語
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長くアナウンサーの仕事をしながら、自分では気がつかないことがあります。
ご近所付き合いで、お隣におじゃましてご夫婦と飲みながら、アナウンサーの仕事について、質問された時のことです。インタビューの仕方で、編集しやすいように相手の言葉に自分の言葉をかぶせない、などの話をしていました。
と言うと、真面目な仕事の話のようですが、ワイン3本空けながら不真面目に。
ご主人が言いました。田巻と同年代です。「テレビでアナウンサーの人がよく、『そうなんですね』って言うけど、あの言葉遣いって、おかしくないですか?」
田巻の心の声です。「・・・なぬ?なぬなぬなぬ?ちょっと待てちょっと待て。言ってるぞ。私も言ってる。何がおかしいんだ~?あれ、私はおかしいのか?」
酔いがさめました。23時にお隣からおいとまし、検索。検索。検索。
いつも頼りにするNHKのサイトで調べて出てきたのが「カ取り言葉」です。
2007年にこのような記事がありました。
「『そうなんですねー』と言う人が、このところとても多くなってきている。少し前であれば、『そうなんですか』などと言っていたところだ。敬語で話すときには、文末の『か』が避けられる傾向が出始めているのではないだろうか」。
これだ!やばい!まじ、やばい。そしてその記事は、このようなくだりでしめられていました。
「おそらく今は、『カ取り言葉』が勢力を伸ばし始めた時期だろう。何年かしたら、こんな状況になっているかもしれない。ついこの間までは、『そうなんですねー』なんてあいづちを打つと失礼だと思われたもんだけどなあ」『へえ。そうなんですねー』」
言葉は生きていて、時代と共に変化しています。当時から14年が経ち、おかしいとも思っていなかったアナウンサーがここにいるわけです。
確かに今は、テレビの司会者からも多く聞かれる相づちとなりました。「そうなんですね」はどのようにして登場したのでしょう。
このように予想されていました。
いわゆる「タメ口」で話すときに、「へえ。そうなんだ」という相づちはよく使われます。「だ」の部分をそのまま「敬語」に変換すると、「そうなんですー」。しかしこれは、例えば、「もう売り切れちゃったの?」「そうなんです」のように、相手に対する答えとして使われているため、相づちとして曖昧です。そのため、言葉の文末に「ね」を添えた「そうなんですね」が相づち表現として登場したのではないかと。
さらに、「そうなんですか」が避けられ始めた理由が、敬語にも「親しみやすさ」が重視されたことが関係あるのではないかと分析されていました。
例えば、「お弁当あたためますか?」より、「お弁当あたためます?」と、「か」の持つ問い詰める口調のイメージを表に出したくないことが「カ取り敬語」の原因の一つなのではないかと結んでいます。
言葉って、ほんとに難しいですね。皆さんはどう思います?
隣のおっさんは、ただの飲んべえじゃなかったというお話でした。
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