上中下の不思議
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大学の後期授業が終わりました。毎年、最後の授業では、これまでの授業内容の感想の紹介やマナー、言葉についての疑問、質問に答えます。そのなかの一つです。
「新潟県は、佐渡と上越・中越・下越に分けられるが、上越は、地図上で南、下に位置するのに、なぜ上?と県外出身の人に聞かれた。答えることができなかった。当り前に思っていたことを他県の人から言われて、初めて気がつくことが多くある」。
田巻が鹿児島から新潟に来た13年前にも、同じことを思ったものです。新潟県以外の方は、新潟県の地図を検索していただくとわかるように、県土は横に長く、日本海に面して縦長です。
新潟市がある場所は、地図では北、上に位置します。上にあるのに、地域は下越(かえつ)なのです。田巻はニュースで気象情報の原稿を書くため、すぐにその答えを調べて解決しました。
上中下の不思議は、歴史と関係があります。新潟県立文書館のサイトによると、新潟県の旧国名は越後国(えちごのくに)ですが、この旧国名は、古代律令体制下で定められたものです。律令制下にあって地域の起点となるのは天皇の都城で、現在の京都市です。そのため、上・下で表現される地域区分は、京都に近い側が上、遠い側が下と使われたそうです。
前・後も同じで、北陸の地域名は「越」(こし)で、天武天皇が越を三つにわける事を決断し、京都に近い側から、越前(現在の福井県北部)、越中(富山県)、越後(現在の新潟県)が誕生。 越後では、「上越後」・「中越後」・「下越後」と区分けされ、のちに「後」という言葉が省略されて現在に至ります。
江戸時代までは、日本の都である京都に向かって旅をすることを「都に上る(のぼる)」江戸に行くことを「江戸に下る(くだる)」と言いました。現在では、東京が都(首都)ですから、 東京に向かって進んで行くことを、上京 といいます。東京に向かっていく列車は上り列車、東京から 出て地方に行く列車を下り列車と言うわけです。
ちなみに、このメルマガが配信され時間、私は、東京から新潟に向かう新幹線に乗っています。東京と新潟を結ぶ新幹線のことを上越新幹線と言いますが、東京から上越地方に向かっているわけではなく、新潟駅があるのは下越です。
実は、上越新幹線の「上越」は、上越地方のことを言っているわけではありません。「上越」の名前は、新幹線開業以前から営業している一部平行在来線「上越線」からきています。この「上越線」は、群馬県と新潟県を結ぶことから、旧国名(上野国、越後国)の頭文字を取り、名付けられました。上野国と越後国の頭文字をとって、「上越」新幹線なのです。
身近な言葉を調べると、見える世界が違ってくるようです。
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