1番好きな日本語は?~新潟医療福祉大学「日本語表現法」④~
「あなたが好きな言葉を10個書き出して。その中で1番好きな日本語は何ですか?」
人生を彩る日本語表現法。授業の中では、言葉に興味を持ってもらうために、さまざまなネタを仕込みます。
その言葉の意味や由来を知ることで、口にする言葉はより生きてくるでしょう。
すらすらと書き出す学生、1つ、2つと絞り出す学生・・・迷ったあげく、「ラーメン」と書いた学生(笑) 確かに、言葉には違いないけどね。”(-“”-)”
将来医療関係に進む彼らに関係するよう、ある有名医療機関が行った「好きな言葉」に関するアンケート結果を発表しました。
医療機関がなぜ言葉に関するアンケートをとったのか、少し不思議でしたので調査背景を見てみると、
こんな紹介が。
「人は言葉で癒すことも傷つけることもできる。私たちは、たった一言を大切にして人を癒し続ける医療グループでありたい。~言葉と技術で医療の未来を支えるメディカルグループ~」
「医療もさることながら、患者様とのコミュニケーションを大切にしている医療グループ」という文章も素敵だと思い、授業に引用しました。
そして、そのアンケートの1位に輝いたのが、
「ありがとう」
予想通りですか?
素敵な言葉を知るほど選ぶのが大変ですが、あえて選ぶとすれば、私もこの言葉です。
漢字で書くと、
「有難う」(有り難う)
有難うは、有り難し(ありがたし) ⇒ ありがとう
*「有る(ある)こと」が「難しい」という意味。本来は「滅多にない」や「珍しく貴重だ」という意味を表した。中世になり、仏の慈悲など貴重で得難いものを自分で得ているということから、宗教的な感謝の気持ちをいうようになり、近世以降、感謝の意味として一般的に広がった。(出典:語源由来辞典)
そして、この「ありがとう」の語源は、 実は、仏教のお釈迦さまのお話にあったのです。
仏説譬喩経(ぶっせつひゆきょう)のお経のなかにある「盲亀浮木(もうきふぼく)の譬え(たとえ)」
盲亀浮木(もうきふぼく)の譬え
ある時、釈迦が、阿難(あなん)という弟子に、 「そなたは人間に生まれたことをどのように思っているか」 と尋ねた。「大変、喜んでおります」 と阿難が答えると、釈迦は、次のような話をしている。
「果てしなく広がる海の底に、目の見えない亀がいる。 その盲亀が、百年に一度、海面に顔を出すのだ。 広い海には、一本の丸太ん棒が浮いている。 丸太ん棒の真ん中には小さな穴がある。 その丸太ん棒は、風のまにまに、西へ東へ、南へ北へと漂っているのだ。阿難よ。百年に一度、浮かび上がるこの亀が、浮かび上がった拍子に、丸太ん棒の穴に、ひょいと頭を入れることがあると思うか」
阿難は驚いて、 「お釈迦さま、そんなことは、とても考えられません」。
「絶対にないと言い切れるか」
「何億年掛ける何億年、何兆年掛ける何兆年の間には、ひょっと頭を入れることがあるかもしれませんが、無いと言ってもよいくらい難しいことです」
「ところが阿難よ、私たちが人間に生まれることは、この亀が、丸太ん棒の穴に首を入れることが有るよりも、難しいことなんだ。有り難いことなんだよ」 と、釈迦は教えている。
今いのちあるは有難し
「有り難い」とは「有ることが難しい」ということで、めったにないこと。 人間に生まれることは、それほど難しいことなのです。 仏教では、人間に生まれてきたことは大変、喜ぶべきことであると教えられています。
当たり前だと思っていたことに、心からありがとうと言ってみる。私たちは、毎日起こる出来事を、当たり前だと思って過ごしていますね。
目が見え、耳が聞こえるのが、あたりまえ。
手足が動くのが、あたりまえ。
毎朝目覚めるのが、あたりまえ。
食事ができるのが、あたりまえ。
友達といつも会えるのが、あたりまえ。
生きているのが、あたりまえ。
誰しも、 今日と同じ日が明日も繰り返されると思う。
今日、 誰かと出逢い、話し、笑い、 食事をして、勉強ができる。
こんな当たり前だと思うことが、 本当は奇跡の連続。
「有ること難し」
生きて、出逢う、という奇跡の連続に、 「ありがとう」を言わずにいられません。
奇跡の反対は? → あたりまえ
世の中の当り前は、失った時に初めてわかる奇跡の連続。あえて、当り前と思うことに、心からありがとう、と言ってみましょう。まわりの日常が全て、奇跡に思えてきます。
こんな話しながら、毎週、言葉にまみれて(笑)わいわいとやっております。
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